『耐候性とは、自然環境のうち主として日光、雨雪、温度、湿度及びオゾンによる劣化に対する抵抗性である。』
(JIS D 0205 自動車部品の耐候性試験方法より)
耐候性を求める場合、屋外暴露試験は、結果が出るまで長い時間がかかります。そこで人工光源を用いた促進耐候性試験が行われます。この促進耐候性試験において、試験結果の信頼性のために3つのポイントがあります。
(1)実際の劣化状態を知る。
屋外暴露試験は、劣化状態・メカニズムを解明し、寿命予測の目標値を知るために重要です。また、屋外暴露試験は開始する時期によって試験結果が異なる場合があり、その時の環境因子を計測することが重要になります。
試験材料は、暴露中に光、熱、水に対し個々の反応を示します。材料が実際に使用される場所により、受ける光、熱、水の量や質は異なります。
例えば太陽光は南面45°と南面90°では全日射量で年間約1.6倍の差となります。使用される環境を正確に把握して、促進試験との比較を進めるということがとても重要です。
(2)環境に合わせた光源のフィルタを選択する
300nm付近の太陽光のエネルギーは、物質の劣化を進める最も大きな要因で、促進耐候性試験において、このフィルタの選択が相関性に重要な要因となります。
材料が置かれている場所 | フィルタの組合せ(インナー/アウター)例 |
---|---|
屋外(太陽光が直接) | 石英/♯275、♯275/♯275、石英/♯295 |
屋内(ガラス越しの太陽光) | 石英/♯320、♯275/♯320、石英/IRCut(赤外カット)/♯350/♯320 |
(3)温度、湿度、降雨サイクルの試験条件を選択する。
■耐候性の中心になるのが太陽光。促進耐候性試験を行う場合、その光源の分光組成が太陽光とどういう関係にあるか知ることが重要です。
(1)太陽光の放射露光量を知る
日本の太陽光の平均1年間放射露光量を4500MJ/m2(*1)とすると、紫外・可視・赤外の各波長毎(*2)の放射露光量MJ/m2は下表のようになります。
*1 JIS D0205 自動車部品の耐候性試験方法
*2 CIE Publication No.85 1st Edition(TC2-17)
波長(nm) | 構成比(%) | 放射露光量(MJ/m2) |
---|---|---|
300~400 | 6.8 | 306 |
400~700 | 44.6 | 2,007 |
700~3,000 | 48.6 | 2,187 |
計 | 100.0 | 4,500 |
(2)放射露光量に応じた試験時間を算出する。
放射露光量のみから計算すると、例えばスーパーキセノン180W/m2(300~400nm)で試験した場合、1年間露光量が306MJ/m2(300~400nm)なので、306,000,000÷180=1,700,000秒、1,700,000÷3600 ≒ 472時間となります。
つまり472時間が1年間相当の試験時間となります。
光源 | 放射照度W/m2 (300~400nm) |
1年間の放射露光量に 対応する時間(h) |
---|---|---|
サンシャイン カーボン |
78.5 | 1,083 |
キセノン | 60.0 | 1,417 |
スーパーキセノン | 180.0 | 472 |
メタリング® | 530.0 | 160 |
この対応時間は、物質の劣化に主として関与する紫外線(300~400nm)の波長域だけを考慮したエネルギーのみによる比較です。実際には屋外暴露と促進試験の相関時間は、光以外の劣化要因(雨・温度・湿度・結露・ガスなど)の影響や、物質の組成、試験機の光源の分光組成、評価項目、屋外暴露試験結果のばらつき等により、一律に決めることはできません。
屋外暴露に対する促進耐候性試験の促進倍率は、しばしば太陽光と促進耐候性試験光源の放射露光量の比較から求められようとされますが、注意が必要です。試験材料の光、熱、水などの影響に対する反応を十分に把握することが重要です。
■過去からのフィールド追跡調査と促進耐候性試験データの集積により、屋外暴露と促進耐候性試験の関係が実証されている照合材料を用いることが有効です。耐候性評価の重要な基準となり、試験時間の短縮の手法にも用いることができます。
試験の再現性を高めるために、次のようなことが重要です。
ポイント① | 光エネルギーを一定に制御する。 ●光エネルギーは、試料面においてダイレクトに広帯域で調節します(狭帯域制御もご要望により対応)。 ●ランプ・フィルタの寿命を把握し、適切に交換します。 ●受光器・放射照度測定器を定期的に校正する必要があります。 |
---|---|
ポイント② | 温度と湿度(結露)を一定に制御する。 ●光エネルギー同様、温度・湿度の制御は試験再現性に重要です。 ●温度センサやブラックパネル温度計を定期的に校正する必要があります。 |
ポイント③ | 降雨の水質を管理する。 ●降雨は、光とともに劣化を促進させる大きな要因です。 ●純水装置を用いて、一定基準以上の水質の水を均一にスプレすることが重要です。 (試料によってはスプレ水温を制御する手法を用います。) |
スガ試験機は、埼玉県日高・川越工場に促進耐候性試験専用のランプ生産工場を設けています。ランプ製作の各工程を高い品質管理の下で行い、分光組成、寿命や点灯耐久性など促進耐候性試験光源として最適な性能を持つランプを生産しています。
スガ試験機の促進耐候性試験機は、あらゆるテクノロジーを結集してランプと装置を一貫生産することで、試験の再現性能を究極まで突き詰めています。
まずはその試験材料にあった試験方法で試験を行うことが基本となります。それぞれの規格にはそれぞれ使用される光源が記されています。
促進耐候性試験機の場合、まず国際規格基準のグローバルスタンダード試験*を行うことがなによりも重要です。
*グローバルスタンダード試験とは、ISO(国際標準化機構規格)をはじめIEC(国際電気標準会議規格)やASTM(米国材料試験協会規格)など世界的なルールに基づき、世界共通の試験としてオーソライズされている試験のことです。光源の分光放射照度分布をはじめ試験機の性能や試験方法が厳重に規定されています。当社は、グローバルスタンダード試験を行う促進耐候性試験機の全機種をラインナップしています。
商取引上、企業の規格によりカスタマイズされた促進耐候性試験が実施されています。当社は、世界中のさまざまな促進耐候性試験規格に対応する試験機を製作しています。
製品開発のスピード化と長寿命保証の要請の中で、試験時間の短縮を目的に超促進試験へのニーズが高まっています。超促進試験は、現在、自動車・建築・塗料・樹脂などの業界で実施され、その促進性が注目されています。当社はさまざまなアプローチにより、新規に考案されている超促進試験機をラインナップ。屋外暴露との相関性研究も進めています。
1種類の促進耐候性試験機で全ての材料の耐候性評価を行うことは危険性を伴います。過去の試験データを参考に、複数の光源での試験結果から相関を求め、その材料の最も適した条件により最良の判定を導き出すといった手法が一般的に用いられる信頼性の高い手法です。実際に使用される材料の環境(日照時間や温度湿度条件)などにより、独自の試験条件、試験時間を定めているユーザもあります。下図はデジタル画像保存性の試験条件の一例です。
太陽光の紫外部及び可視部の分光放射照度分布に極めて近似した光源です。フィルタの組み合わせにより屋内外の太陽光の分光放射照度分布を正確に再現します。更に、紫外部放射照度が太陽光の約3倍(180W/m)の高照度試験を開発、飛躍的に促進性を向上させました。
紫外部立ち上がりが太陽光の分光放射照度分布に近似した光源で、世界的に80年以上の歴史があります。JIS、ISOを初め多くの規格に規定されており、試験成果は、あらゆる製品・材料の技術発展に多大な貢献を果たしています。
紫外部の波長313nmにピークを持つ紫外線蛍光灯光源です。*
ISO・ASTM・JISに規定されている光源で、塗膜・プラスチックの紫外線劣化試験に用いられます。
*340nm~351nmピークもあります。
紫外部(波長388nm付近)に強力なエネルギーを持つ光源です。歴史的に最も古くから使用されています。繊維製品をはじめ、建築内装材、筆記具など身の回りの日用品の耐光試験評価に広く用いられています。
従来の光源に比べ紫外部に強大なエネルギーを持つ光源です。製品開発のスピード化の中で、超促進試験を目的として開発しました。屋外暴露との相関性研究も進められています。
試験後の材料を、物性、色、光沢、表面解析など、さまざまな角度から評価し、屋外暴露との相関を導き出します。
赤 青 緑 白
70×50mm
メラミンアルキド系
焼付け型溶剤塗料
白のみ:酸化チタン系
基材として、リン酸亜鉛処理
屋外暴露 | 本社屋上
2006.6.1~2008.2.29 |
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メタリング® MV3000 |
Q/#255 530W/m2(300~400nm) BPT63℃,50% 照射降雨18分→照射 102分 |
サンシャイン カーボン S80 |
Aフィルタ 255W/m2(300~700nm) BPT63℃,50% 照射降雨18分→照射 102分 |
スーパー キセノン SX75 |
Q/#275 180W/m2(300~400nm) BPT63℃,50% 照射降雨18分→照射 102分 |
屋外暴露試験は、実際の劣化状態を知り、劣化メカニズムを解明し、寿命予測の目標値を定めるために極めて重要です。
暴露角度固定のダイレクト型、屋内条件を想定したガラスカバー型、太陽を自動追跡する促進型など様々な装置をラインナップ。また太陽エネルギー量を紫外・可視・赤外部に分けて記録する積算照度記録装置など気象因子測定機器も各種製作しています。
(詳しくは屋外暴露装置シリーズカタログをご覧ください。)